2018年6月

ログブックは”そろばん”で

【この頃、宣伝飛行オンパレードの日々だった】

【この頃、宣伝飛行オンパレードの日々だった】

 飛行終了後、パイロットはその都度、飛行日誌(ログ・ブック)に飛行時間等を記録することになっている。 これを証明するのは機長である本人や教官であって、通常、航空局に提出するフライト・プランやフライト・レコーダーなどと照合するわけではない。 だから私は、この自分で正しく記録する行為は究極のエアマンシップと言えるのではないかと思っている。

 

   【1時間25分】

【1時間25分】

       ところで、このログ・ブックは1ページに10~15行くらいあって、ページ毎に合計、累計を記載するのだが、このⅠT真っ盛りの今においても、まだ紙に手書き、自力で足し算するのだ。  この足し算に計算機を使用する人が多いようだが、私はそろばんで行なう。 私のパチパチを初めて見る人には必ず驚かれるのだが、私は自分の作るエクセル表の方が信用できず、必ずそろばんで検算するタイプなのだ。

 この愛用するそろばんは、35年程前 航空会社に就職したての頃、先輩から譲り受けたもので、そろばんがノーマルだと思っていた。 1か所 ・・ の印が貼り付けてあって、たとえば1時間25分を 1・・25 のように珠を置く。 分が60になると、時間側に1を足して、分側の60を払う。ただそれだけで、計算機よりも簡単だと思うのだが…

 それにしても、飛行後に書くのはログ・ブックだけでない。 搭載用航空日誌、飛行報告書、訓練生のログ・ブック、伝票・・・運航管理や整備でも同じ時間を別途記載したりする。 何とも効率悪いのだが、1つに入力すればすべての書類に飛んで行くなんてこと、今の時代できるよね?

                        by 計算もアナログなポッポ

 

 

あちらもこちらも権威勾配

 権威勾配最近 大学のアメフト部の危険タックル事件で、指導の在り方が問題視された。これはスポーツ界だけでなく、大なり小なりどんな組織の中にもある根深い問題なのだと思った。

 操縦教育でも、戦時中なら「殴られて覚えていく」というのが当たり前だったそうだが、現代では「賞賛と叱責」「権威勾配」などが重要テーマとして教員は学んでいる。でも実際には、機長や教官のミスを副操縦士や訓練生が指摘できずに事故に至ることが起きている。

 指導者は自分の受けた教育法を踏襲し、それで良い結果を残しているならば、当然自分は正しいと思うだろう。だから、謝りもしないし、周囲が騒がなければ問題とも思わない。

 では、行き過ぎた指導との線引きはどこにあるのか?大声でひどく傷つけるような言葉を発したとしても、法にもルールにも触れない。指導要領などで声の大きさや話し方までマニュアル化できないし、そんな細かなことは実行不可能。私とて、1から11まで決められた無難なことを教えるなんてまっぴらごめん、AIがやればいいことだ。

 ということで、頑固な指導者を変えていくより、子供たちに「自分で考え、それは違うと言える」教育をする方が現実的だと思う。「大人って、正義より権力やお金の方が好きでね、自分の損になることはあまり言わないから、自分でよく考えた方がいいよ」と。指導、管理する側はやりにくくなるだろうが、真の教育技術を磨けば皆付いてくるものだ。我々は、何となく周囲の空気・情報に流されていくのだが、それは不正タックルと同様、危険かもしれない…

 その点、航空機は風に乗りつつも、流されっ放しじゃ滑走路からはみ出すので、必死に抗い危険回避するんだな~。

                      by 体重100ポンドに満たず重厚感薄い教員ポッポ